とある夏の日の思い出

僕は大学を卒業して、ややブラックな企業に就職した。

就職して1年と少しが経ったころ。職場で出会った友人と、たまの休みに少し遠出してみようという話になった。

僕たちは一時間ほど電車に揺られ、とある観光地についた。お目当ては、現地で行われている夏祭りである。

一通り露店を見て回り、僕たちは粉物(焼きそばだったかお好み焼きだったか忘れてしまった)を食べた。

祭りで食べるそれは、普段よりおいしく感じたことを覚えている。

 

祭りのメインイベントは花火だった。少し早めに現地入りした僕たちは、花火までの時間をベンチに座って待つことにした。

夕闇と夏祭り特有の空気感が混ざり合い、僕の心は不思議な開放感に包まれていた。

僕は普段はなかなか話せないような心の内を、ぽつりぽつりと友人に打ち明けた。

友人はうんうん、と話を聞いてくれて、「自分もそういう気持ちを抱いたことがある」と言った。

なんだか、自分という存在をまるごと肯定してもらえたような気がして、とても嬉しかった。

その後、一緒に見た花火は、とても綺麗だった。

 

こうやって文章にしてみると、なんてことないできごとのように思えるけど。

自分にとっては、「あんな1日を過ごせただけで、生まれてきた価値があった」と思えるぐらい、大切な思い出。

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