邪心を持って検索したら返り討ちにあった話【Mastodon Advent Calendar 2017】
【前置き】これは、アドベントカレンダーに参加した時の記事です。元はアスタルテにトゥートしていたのですが、読みづらいのでこちらに移動しました。
邪心を持って検索したら返り討ちにあった話【Mastodon Advent Calendar 2017】
☆Mastodon 2 Advent Calendar 2017 の9日目です。 https://adventar.org/calendars/2265
☆昨日はYukiyaさんの『friends.nicoの思い出』でした。http://mastportal.info/2807
2017年6月1日。Pawooに画期的な機能が実装された(https://pawoo.net/@pixiv/16958528)。
トゥートの自動消滅機能である。時限削除とか自動削除と表現する人もいるが、正確には自動消滅というらしい。どうでもいい。
当時私はPawooを初めて一か月足らず。ホームがまだ寂しく、ローカルタイムラインを呆然と眺め(今もやる)、メディアタイムラインを見て気まぐれにブーストし(今もやる)、連合タイムラインの時速に酔っていた頃である(今も酔う)。
自動消滅機能と聞いて私は驚いた。創作とは特に関係のなさそうな機能だからである。何故あれを実装するに至ったのか未だに知らない。アンケートの方が創作に使えると思うのだがそちらは未実装だ。ニコフレから流れてくるアンケートを見るとちょっと羨ましい。診断メーカーにもマストドンのシェア機能が付いていることだし、あれで何か遊んでみたい。
まぁ今日話したいのは自動消滅機能のことだ。実装の知らせを聞いて私は喜んだ。というのも、私は2~3日前までのトゥートを遡り、意味のないトゥートを削除する作業を日課としていたからだ。もちろん、99%のマストドンユーザーと同じく全てのトゥートに意味はないのだが、その中でも特に無意味なものを消していたのである。「眠い」とか、日常に関するものが多かったと思う。何故消していたかというと、単に自分で眺めていて目障りだったからだ。散らかった部屋に住んでいてもゴミはゴミ箱に入れるように、散らかったトゥートの中から無駄なものを選んでは消し去っていた。
自動消滅があれば、作業から解放されもっと無意味に色々トゥートできる。私は確信した。
確信したので、さっそく魔法のハッシュタグ『#exp10m』を付けて自分のトゥートを凝視した。本当に10分で消えるのか見たかったのだ。
結果、消えたのは12~13分後だった。
実験的、と運営が銘打つだけあって精度は曖昧。だが充分である。2~3分なんて口を開けてローカルタイムラインを見てれば一瞬なのだ。私の人生も、これを繰り返している間に一瞬で終わるのだろう。急に怖くなってきた。
魔法のタグは10分だけでなく「1分」「1時間」「12時間」「1日」「7日」と用意されている。さらに数字さえ変えれば好きな時間に消滅させられるという至れり尽くせりっぷりだった。多くのPawooユーザーは新機能を歓迎し、期間限定のお知らせに使えるとか進捗を上げやすくなるとか、その使い方について和気藹々と話したりしていた。
魔法のタグはすぐにエクスキューズとしての意味も持つようになる。つまり、『このトゥートは長く残しておくに適さないものと理解していますよ』『どうせ消えるんだからブーストすんなよ』というアピールである。
ちょっとした不満や愚痴が自動消滅タグをつけて流れてくるようになってきた。非公開トゥートにもすでに同じ意味合いがあったので、ダブルで使われると内緒話を聞いているような印象を受ける。見る側としても、内緒でちょっと話すくらいならいいよね、と流しやすい。
ささやかな日常や愚痴が魔法のタグに導かれて来ることに慣れた頃、私は思いもよらぬ発見をする。マストドン検索ポータルに自分が削除したはずのトゥートが残っているのだ。しかも例のタグ付きで。
あの検索支援サイトでは、どうやら魔法は通じないらしい。FF9のウイユヴェールみたいだ(分かりにくい例えだが、特に適切な例えでもないので分からなくて良い)。
削除済みのトゥートが外部サイトに記録されていて私は恥ずかしくなった。が、同時にあることを思い付いてしまった。
『#exp1m』で検索したら、やばいトゥートが出てくるのではないか?
Pawooはマストドンへの理解が浅い人が多いのか、twitter⇔pixiv⇔Pawooと連携している状態でtwitterの愚痴をローカルに流している人すらいる。連携を解除できることも、公開トゥートが外部インスタンスに取得されることも知らないのだろう。知っててやってたら怖い。狂戦士か。
削除済みトゥートが外部サイトに残ることを知らない人も大勢いるはずだ。現にローカルには、今も#expの文字が流れている。
私の良識が私に語りかける。他人様の秘密を覗くようなことはいけないよと。
私の邪心が私に語りかける。ただちょっと検索してみるだけじゃないか、と。
私は迷った。
思えば真面目に生きてきた。
落し物を届けたら警官に迷惑そうにされ、妊婦に席を譲ろうとしたら何故か睨まれ、自分と同じ境遇の人を励ましたら『こんな状態なら生きる価値はないと思います』とリプライを送られた人生だった。
よし、真面目に生きるのをやめよう! 私は邪心に屈した。
良識を意識からログアウトし、ゴシップを漁る気持ちで#exp1mを検索窓に入れる。
結果はすぐに現れた。
やばかった。
予想以上にやばかった。
奇声とか雄叫びとか謎の文字列とか、無意味どころか意味の分からないトゥートがわんさか出てきた。
なるほど、1分で消えるだけのことはある。というか消せ。
私は画面をそっと閉じる。そして、明日からまた真面目に生きようと決心した。
探せば想像していたようなやばいトゥートも見つかるだろうが、あの画面をスクロールし続ける気力は無い。まず、#exp1mだけでも相当な量なのだ。相当な量の奇声を見ることになるのだ。こういうタイプの持久力は私にはない。
私はPawooに戻って毒にも薬にもならないトゥートをタグ付きで流し、何事もなかったかのようにいつものマストドンライフに戻った。消えていくことが約束されたトゥートの大半は、読む価値なんて初めからない。そしてその「大半」は全てを押し流していく。何故こんな当たり前のことに気付かなかったのか。まったく上手くできてやがる。
Pawooの狂気によってPawooの闇は葬られた。31万人の住むインスタンスでは、今日もタグ付きで何かよく分からんもんが流れていく。